故障の種類と予防

けが(故障)は、走る距離が長くなるにつれ、起こる可能性が高くなります。安全かつ快適に走るためにも、故障とその予防の基礎について学習しましょう。

故障の種類

故障といっても、やや深刻なものからそれほど大したことでないものもあります。ここでは、やや深刻なもの(=整形外科的なもの)を説明します。

■変形性膝関節症

膝(ひざ)関節は、関節包が膝関節をくるんだ状態にあります。この関節包の中に滑液というグリースのような役割をする液が出て、骨と骨との摩擦を軽減することによって関節は滑らかに動かせるわけです。しかし、体が温まっていなかったり、気温が低いと滑液があまり出ません。その状態で関節に負担をかけると、ザラザラの骨と骨が擦れあって炎症を起こします。障害の程度、年齢によって治癒に要する時間はかなりばらつきます。ウォーミングアップを十分にやりましょう。

■半月板損傷

膝関節には、クッション作用を果たす軟骨の半月板が骨の間に挟まっています。しかし、これに圧力をかけたままねじるように力を加えると亀裂が生じます。半月板は一部、または全摘手術(ほとんど内視鏡手術)をします。

■座骨神経痛

座骨神経痛の原因の80%が、椎間板ヘルニアにあるといいます。痛い個所はお尻から太股の後側ですが、原因は違う場所。腹筋、背筋の力以上に強い運動を続けると、腰椎を正常に保ちきれなくなってはみ出した椎間円盤が神経を圧迫し、痛みを起こすというパターンが多いようです。疲労が溜まっているときは要注意。予防は、腹筋、背筋の強化、腰を伸ばすストレッチング、腰を冷やさないこと、となります。

■腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)

腸脛靭帯(膝の外側に位置する腸骨から脛骨まで長くつながっている靱帯)が膝のあたりで大腿骨の出っ張りとすれて炎症を起こすというもの。主たる原因は走り過ぎとされます。高橋尚子選手がこれで泣きました。市民ランナーレベルではめったにない故障。

■シンスプリント

一般に、脛骨過労性骨膜炎と呼ばれる症状を指します。脛骨(スネの骨)に沿った痛みが生じます。足のショック吸収能力が充分ではない状態で、堅い路面でのスピード練習、長時間の走行などを続けると発症しやすくなります。脛骨につながる筋肉痛が生じるようなら要注意。ストレッチングやカーフレイズなどの筋トレで予防します。

■アキレス腱炎

ウォーミングアップ不足の状態で、いきなりクラウチングスタートなんてやってしまうと起きる可能性高し。市民ランナーレベルでは、アキレス腱を伸ばすストレッチングとウォーミングアップを忘れなければ、まずならないはず。

■肉離れ・靭帯断裂

発症の原因はさまざまにありますが、起きやすい状態は体の水分(ミネラル分も含めて)が減っている時と、突然力を加えた時。ラストスパートで走りを切り替えたり、まだ元気なうちに登り坂にさしかかってグッとつま先に力を込めて蹴る、というような動作の時が危険です。事前のストレッチングとウォーミングアップで危険はぐっと下がります。

ひざの故障を防ぐ方法

走り始めた人が最初に痛めるのが、ひざ。走り込んだ人に起こりやすいトラブルもひざです。そのほとんどの原因が「筋力不足」にあります。つまり、持っている力以上のものを引き出そうとしたために起こります。 ランニングの着地時の衝撃は、体重の3~5倍にもなります。長距離、あるいはスピード走ではそれだけ身体、筋肉、関節への負担は大きくなります。筋力が弱ければ、数百kgという衝撃が何度も何度も関節(ひざ)にダイレクトに行ってしまうため、故障が起きても不思議ではないのです。  ひざの故障を防ぐには、以下の方法があります。

(1) 筋力を強化する。特に大腿四頭筋(太ももの全面の筋肉)を強化する。

 負荷は軽く、回数を多くするのがポイント。さらにハムストリング(太ももの裏側の筋肉)のストレッチングを十分に行う。

(2) 軽くて薄いレース用シューズは避け、クッション性と安定性のよいシューズをはく。

舗装路などの固い路面は避け、足に柔らかい土の上を走るようにする。

(3) 体重の重い人は減量する。

(4) 上下動の大きなフォームを改め、着地時の衝撃の少ないなめらかなフォームにする。

 以上で改善しなければ、走る距離を減らし、スピード練習を控えましょう。

足裏の故障を防ぐ方法

 ランニング中に突然に足の裏が痛むことがあります。これは足の裏にある足底筋膜が炎症を引き起こしたためです。足の裏が痛む原因は、脚全体の脚力不足です。脚力不足で脚が疲弊してくると、土踏まずのアーチを形成している足底筋膜が伸び切った状態、つまり扁平足のような状態になり、足裏全体が痛くなるのです。

予防のためにも日頃から脚力を鍛え、足裏のマッサージを行っておきましょう。足裏のマッサージを行う際には、この土踏まずのアーチ部分を念入りに行うのが有効です。応急措置としては、まずふくらはぎのマッサージをします。足の裏は、かかとからアキレス腱を通って、ふくらはぎへとつながっていますから、ふくらはぎのマッサージからアキレス腱のストレッチング、足裏のマッサージへと続けると痛みは分散しやすくなります。

マメを防ぐ方法

ランニングのトラブルのひとつに、足にマメができてしまう経験はだれにもあると思います。マメは、繰り返しの摩擦によって起こるやけどの一種です。初期は、皮膚が赤くなって痛むだけですが、そのまま走り続けると水泡ができ、さらには水泡が破れることがあります。ランナーが「マメができそうだ、ちょっと痛くなってきた」と感じるのは、まだ皮膚が赤くなり始めた頃です。

この初期の段階で適切な処置を行っておけば、マメの進行をかなり遅らせることができます。もし、ソックスのしわや、シューズのひもの締め過ぎが原因なら、立ち止まって直しましょう。はっきりした原因がない場合は、給水所ごとに止まって、シューズに水をかけて足を冷やすようにします。マメはやけどの一種なので、冷やすことで多少は進行をくい止められます。

ただし、はき慣れない新品のシューズで走ったためにマメができたという場合、こういった方法はあまり効果がありません。慣れないシューズでいきなりレースに出るのはやめましょう。  

腰痛を防ぐ方法

 腰痛はいろいろな原因で起こりますが、ランニング時の腰痛は腰背筋の疲労がおもな原因といえます。レースで疲労したというよりも、日頃のトレーニングで疲労がたまっていたのに、それを解消せずにレースに出たことで腰痛が引き起こされたのです。

解消法は、まず、立ち止まって腰を回したり、前後屈を行って腰背筋をゆっくり伸ばします(腰の周辺の筋肉をリラックスさせる)。背中をそらせて走っていると腰痛になりやすいので、前傾姿勢に変えてみるといいでしょう。合谷(ごうこく=親指の付け根あたりのツボ)を押しながら走るのもいいようです。よく腰痛を起こす人は、日頃からトレーニング後に腰のマッサージを行って、腰背筋をほぐしておくといいでしょう。


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