栄養学の基礎理論
栄養と栄養素
「栄養」とは、「摂取した栄養素を、消化吸収し、自分の成長や活動に用いること」です。「栄養素」とは、「生物が生命を維持し活動していくためのエネルギー源」です。食品中の栄養素の主な働きは、エネルギーになる、体を作る材料になる、体の調子を整える、の3つです。
三大栄養素
栄養素のうち「炭水化物」「たんぱく質」「脂肪」は、「三大栄養素」とも呼ばれます。
炭水化物
炭水化物は糖類とも言われ、ブドウ糖などの単糖類と、ショ糖やオリゴ糖などの少糖類、でんぷんやグリコーゲンなどの多糖類に分けられます。
動物の体内にはわずかしか含まれず、植物から光合成によって作られる成分です。 主にエネルギー源として利用されますが、一部は糖たんぱく質や核酸の構成要素ともなる物質です。 植物性食品から摂取しますが、一日の総摂取エネルギーのうち50-70%程度が適正な摂取比率です。
たんぱく質
たんぱく質は、20種類のアミノ酸が、様々な長さや組み合わせで結合した化合物で、人間の体内だけでも10万種類が存在します。
体の主成分であると同時に酵素やホルモンの成分でもあり、英語のプロテインという言葉はギリシャ語の「第一のもの」という意味の生命維持に欠かせない存在です。一日の基準摂取量は、成人男性で、60g、成人女性で50gです。
脂肪
脂肪(脂質)は、体脂肪として体温維持やクッションの役割を果たすだけではなく、細胞膜や核酸といった、生体の基本的な成分の重要な構成要素です。
水には溶けずに有機溶媒に溶ける性質があり、単純脂質と複合脂質、誘導脂質の3タイプに分けられます。 単純脂質は中性脂肪やなどで、必要に応じてエネルギー源になります。複合脂質は単純脂質にたんぱく質などが結合してできており、細胞膜の構成成分などになり、エネルギー源にはなりません。誘導脂質にはコレステロール類などが含まれ、ホルモンの合成などに重要な役割を果たします。
その他の栄養素
三大栄養素の他に重要な栄養素として、「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」などがあります。
ビタミン
ビタミンとは、糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素とは異なり、直接体を構成したりエネルギー源にはなりませんが、体の正常な機能を保つために必要不可欠な物質のことを言います。
油に溶ける脂溶性ビタミンと、水に溶ける水溶性ビタミンとがあり、脂溶性ビタミンは体に蓄積する性質があるためサプリメントなどで大量に摂取すると、体に障害が起きる可能性があります。 一方、水溶性ビタミンは、余計に摂っても排泄されるため、過剰摂取の害はあまりありませんが、その分毎日食品からとる必要があります。
ミネラル
ミネラルとは、人体を構成する、酸素、水素、炭素、窒素以外の元素で、栄養素として不可欠なものを必須ミネラルといいます。
ミネラルは体内では合成できないため、食事からとることが必要です。 骨や歯の成分になったり、浸透圧を調整したり、神経伝達に関与するなど、基本的な生命活動に欠かせない物質ですから、不足すると不調が起こり、摂りすぎても過剰症があらわれます。
食物繊維
食物繊維とは、基本的に人間の消化管では分解できない成分で、直接栄養になるわけではありませんが、最近はその健康効果が注目されています。
食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維があり、それぞれに特徴的な効果があります。 不溶性食物繊維は、腸を刺激することで運動を促進し、腸内の有害物質の排出を促したり便秘を予防する効果があります。また、硬い食品が多いので、噛むことによるあごの強化や虫歯の防止にも効果的です。 水溶性食物繊維は、コレステロールや糖が腸内で吸収されることを妨げるため、高脂血症や糖尿病の予防に効果があります。さらに、腸内細菌に発酵され、乳酸菌などの善玉菌を増やす効果もあります。
よい食生活のポイント
バランスをとる
主食や副菜のバランスだけでなく、調理方法もかたよらない様に気をつけましょう。
穀類を中心に
もっとも基本となるエネルギー源は、炭水化物(糖質)です。毎食穀類を摂取し、糖質などのエネルギー源を確保しましょう。
リズムを大切に
一日の規則正しいリズム作りにも、食事は大切な役割を果たします。
塩分は控えめに
外食などの塩分の多い食事をした時は、他の食事で塩分を減らすなどの工夫をしましょう。
食材は多様に
野菜や穀物、肉や魚、乳製品などを、多様に組み合わせた食事の工夫が大切です。
活動と食事のバランス
活動量が多い時は食事も多く、太ってきたら控えめにしましょう。ただし無理なダイエットは禁物です。
食事を楽しむ
食事はおいしく味わい、楽しみましょう。食事には栄養補給だけではなく人との交流という利点もあります。